招鬼猫物語

招鬼猫物語第26話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第26話

その頃、勅令を破り投獄された鑑真一行と栄叡、普照は、冷たい石畳みに敷かれた湿った藁の上に座っていました。

投獄されている牢獄の天井近くには明かり窓があり、僅かに月の光が入り、各々の顔を青白く浮かび上がらせています。

鑑真は目を閉じ、微動だにせずお経を黙読しているようです。

夜が更けるにつれ皆の吐く息は白く、手を揉む音、手に息を吹きかける音が多くなってきました。

寒さに我慢できなくなった栄叡が「鑑真さまを中心に体を寄せ合い、暖をとろう」と小さな声で皆々に言います。

鑑真の周りを弟子、栄叡、普照たちが取り囲み、体を密着させ、各々がお経を唱え始めます。

しばらくすると黙読していた声が牢獄の外に響き渡るほどになっています。

牢番二人がお経を唱えるのを止めさようとやって来ました。そこには暗闇に青白く浮き上がり、湯気が立ち昇る鑑真達の姿がありました。

牢番が「おい、お経を止めろ」と持っていた棒で弟子たちを突きながら注意しました。突かれた弟子たちは少し呻きながらもお経を唱え続けています。

唱える事を止めない鑑真達に、業を煮やした牢番の一人が「あれを持ってくるか」と言って牢番の詰め所に戻って行きました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第25話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第25話

水を飲み、一息ついた男達が口々に「秀傑、窯の温度が下がるまで時間があるから酒を持って来い」と言い始めました。

秀傑は「どうする」という表情で父親の周に目を向けています。

それに気づいた周は「次の仕事まで少し時間はあるから酒を飲んででもいいぞ」と言います。

それを聞いた男達が「親方は話が分かる方だ、早く酒を持って来い」、「早くしろ」と促します。

秀傑は「ちぇっ、一番下っ端だからこき使いやがって」と愚痴を言いながら腕に抱いていたスズを地面に下ろし、酒甕を取りに走り始めました。

スズは初めて来た場所に下ろされてしまい、どうしたらいいか分からず緊張した様子で男達をじっと見ています。

そして酒甕を取りに走る秀傑を追っていた男達の視線が、今度はスズに集まります。

一人の男が「親方大変だ、猫が敷地の中にいますぜ」と大声を出しました。他の男達も早く捕まえないと大変だと口々に言っています。

すると、親方の周が「あの猫は賢い猫だ、乾燥させている瓦を倒したりはしないから心配するな」と言いながら、男達の所に近づき腰を下ろしました。

 


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第24話

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第24話

遠くからは一つに見えていた炎の光は近づいてみると、小高い山の斜面に沿って所々に開いた穴から炎が出ていたのです。

周と秀傑、スズは斜面の一番下に開いている穴の前まで来ました。その穴は屈むと人間が入れるぐらいの大きさがあり、近くには大量の薪が積んであります。

顔を真っ赤にし、体中から大粒の汗を噴出させている男達がその薪をどんどん穴に放り込んでいます。

すると斜面に沿って開いた穴から薪が放り込まれるたびに勢いよく炎が立ち上がります。

秀傑が「山が燃えているようで怖いのか、これは穴窯という焼き物を焼く窯だよ」とスズに話しかけます。

スズにはその光景が宇宙へ一直線に駆け上がって行く龍のように見え、目を丸くして微動だにせず見ていたのです。

火口をのぞき込んでいた周が「火を止めるぞ」と大きな声で言っています。

男達が薪を投げ入れるのを止め、薪が積んである近くに置いてある水甕の水をぐびぐびと飲み、思い思いの場所にぐったりと腰を下ろしました。

開いている穴々から噴き出していた炎は治まり、オレンジ色をした窯の中に幾十も並んだ白く浮き上がるモノが見えてきました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第23話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第23話

赤い点は周とスズが近付くにつれ段々と大きなオレンジ色になり、太陽がそこにあるかのように辺りを明るくしています。

何人かの男達が明かりを放っている近くで動いているのが分かるようになってきました。スズは顔に熱を感じたので見上げると、目にオレンジ色の炎を映した周の笑顔がありました。

すると「帰ってくるのが遅かったな」と声がしてきました。

「すまなかったな。明るいうちに帰れると思ったが、港で騒ぎあったからな」と周が返事すると、突然顔を真っ赤にした若い男が現れました。スズはビックリして周の懐で小さくなり、若い男を見上げています。

若い男は「親父、港で何があったんだ。その猫はどうしたんだ、猫を飼っていけないのがここの決まりだったのでは」といろいろと聞き始めました。

周は港での出来事をその若い男、息子の秀傑(しゅうけつ)に話し始めました。そして面倒をみるようスズを秀傑に渡しました。

「ところで秀傑、窯は上手く焚けているのか」と父の周が聞きます。

秀傑は「はい、火の色を見るともう火を止めてもいい頃合いだと思います」とスズの背中を撫でながら答えます。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第22話

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第22話

公さんの奥さん香凛(カオリン)が店の奥から出てきて、「ありがとうございます。ところでスズに会うにはどこに行ったらいいのかい」と尋ねてきました。

「私は阿育王寺(あしょかおうじ)の近くに住んでいる周です」と男は答えました。

「阿育王寺は鑑真様が船に乗る前にお寄りになったお寺だね、スズも鑑真様と船で一緒だったのよね」と香凛がスズの頭を撫でます。

スズは「にゃー」と鳴き、目を大きくして尻尾を振っています。

香凛は「周さん、阿育王寺にお参りに行くときにスズに会いにいきますね」と言い、机の上のお金を手に取り、お椀を片付け始めました。

周はスズを肩に乗せ店を後にすることにしました。周の家がある阿育王寺の麓までは市場からかなりの距離があります。

どれくらい歩いたでしょうか、陽も傾き、道は竹林に覆われうす暗くなってきました。竹林からは獣の鳴き声がしてきます。

周はスズが不安になっていると思い、肩から下ろして抱くことにしました。

また、しばらく歩くと陽が落ち、辺りは真っ暗になってしまいました。スズの目が大きくなり、耳がピンと立っています。

周の足取りが急に軽くなると、暗闇の中に赤い点が見えてきました。


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