招鬼猫物語

招鬼猫物語第23話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第23話

赤い点は周とスズが近付くにつれ段々と大きなオレンジ色になり、太陽がそこにあるかのように辺りを明るくしています。

何人かの男達が明かりを放っている近くで動いているのが分かるようになってきました。スズは顔に熱を感じたので見上げると、目にオレンジ色の炎を映した周の笑顔がありました。

すると「帰ってくるのが遅かったな」と声がしてきました。

「すまなかったな。明るいうちに帰れると思ったが、港で騒ぎあったからな」と周が返事すると、突然顔を真っ赤にした若い男が現れました。スズはビックリして周の懐で小さくなり、若い男を見上げています。

若い男は「親父、港で何があったんだ。その猫はどうしたんだ、猫を飼っていけないのがここの決まりだったのでは」といろいろと聞き始めました。

周は港での出来事をその若い男、息子の秀傑(しゅうけつ)に話し始めました。そして面倒をみるようスズを秀傑に渡しました。

「ところで秀傑、窯は上手く焚けているのか」と父の周が聞きます。

秀傑は「はい、火の色を見るともう火を止めてもいい頃合いだと思います」とスズの背中を撫でながら答えます。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第22話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第22話

公さんの奥さん香凛(カオリン)が店の奥から出てきて、「ありがとうございます。ところでスズに会うにはどこに行ったらいいのかい」と尋ねてきました。

「私は阿育王寺(あしょかおうじ)の近くに住んでいる周です」と男は答えました。

「阿育王寺は鑑真様が船に乗る前にお寄りになったお寺だね、スズも鑑真様と船で一緒だったのよね」と香凛がスズの頭を撫でます。

スズは「にゃー」と鳴き、目を大きくして尻尾を振っています。

香凛は「周さん、阿育王寺にお参りに行くときにスズに会いにいきますね」と言い、机の上のお金を手に取り、お椀を片付け始めました。

周はスズを肩に乗せ店を後にすることにしました。周の家がある阿育王寺の麓までは市場からかなりの距離があります。

どれくらい歩いたでしょうか、陽も傾き、道は竹林に覆われうす暗くなってきました。竹林からは獣の鳴き声がしてきます。

周はスズが不安になっていると思い、肩から下ろして抱くことにしました。

また、しばらく歩くと陽が落ち、辺りは真っ暗になってしまいました。スズの目が大きくなり、耳がピンと立っています。

周の足取りが急に軽くなると、暗闇の中に赤い点が見えてきました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第21話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第21話

調理台一杯に薄く伸びた生地が出来上がりました。すると公さんはその生地を包丁で器用に細く切り、ぐつぐつ煮えている鍋に入れ茹で始めました。

男が「手で伸ばさないのか」と独り言を言っています。それを聞いた公さんが「手に頼らないから不托っていう名前だよ」と教えてくれました。

しばらくすると不托が茹で上がり、椀に入れた不托の上に刻んだ野菜と甘酸っぱいタレを掛けました。そして、「うちの不托は甘酸っぱいのが売りだよ、食べてみな」と差し出しました。

男は差し出された椀を店の前にある机に置き、椅子にすわり不托を食べ始めました。スズは隣の椅子の上に座り食べるのをじっと見ています。「タレが絡んで美味いな」と男がスズを見ながら言います。

それを見て公さんが「スズはどうしてあんたと一緒にいるのかね」と尋ねました。

男は「王船長が嵐で亡くなって、万頭売りの楊おばさんに頼まれたんだよ」と返事をしました。「これからスズの事をよろしく頼むよ」と公さんは言い、次の仕事に取り掛かり始めました。

不托を食べ終わった男は金を机の上に置き、スズを抱きあげ立ち上がりました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第20話

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第20話

「あんたならいつも万頭を買いに来てくれる人だから、スズを預けても心配ない」と楊おばさんが言います。

男が「俺の家に来れば毎日万頭を買ってやるぞ」と大笑いしながら、スズを抱き上げ、あごを撫でます。

すると喉を鳴らしながら尻尾を振り始めました。

それを見た楊おばさんは「万頭を買いに来るときに連れて来てもらうんだよ」と言って、お店に戻って行きました。

「よし、俺たちも家に帰るぞ」と男は言い、抱いていたスズを肩の上に乗せ市場に向かって歩き始めました。

市場には多くのお店があり、通りは人と人がぶつかるほど賑わい、市場の広場では見世物を見る人達の輪が何重にもできています。

「スズじゃないか、どうしたんだい」と不托(ふたく)を売っている公さんが声を掛けてきました。

男はまだ不托を食べたことがなかったので店の前で立ち止まってやりました。

スズは都の長安から新しく伝わった麺「不托」を作るところを見るのが大好きでした。

公さんが小麦粉を練ったものを手ではなく、棒を使ってクルクルと伸ばし始めると、スズは回る棒を大きな目で追い始めました。


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