社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第6話
船倉へ通じる入口は真っ暗で階段は数段先までしか見えず、甲板にポッカリ空いた穴のように見えます。スズは尻尾を立て、大きな目の瞳をさらに大きくして真っ暗な船倉へと下りていきます。
船倉には航海に必要な食糧、遣唐使、鑑真一行が日本に持ち帰る様々な物が置いてあります。
船倉へ下りたスズは鶏が飼われている竹籠、食料の入った木箱、たくさん並んだ水甕の前を通り過ぎ奥へと進みます。
船の中央から船尾には大小さまざまな木箱が船倉の天井まで積まれ、ところどころにスズがやっと通れるほどの隙間があります。スズは体を細長く伸ばしたり、姿勢を低くしたり、木箱の上に乗ったり、降りたりして奥へと進みます。
すると木箱と木箱の間に布で包まれた箱が置かれている場所に着きました。そこはスズがこの航海中に任された大事な仕事をする場所です。
布で包まれた箱の上にスズがひょいっと飛び乗り、大きな目で辺りを見回してから隅に置いておいた小さな包みを見ました。「ん?何か変だな」と鼻で包みの匂いを嗅いでいます。
包みの中には昼間、明州の港町で楊おばさんに貰った万頭が入っていましたがどこにも見当たりません。