社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第48話
スズが驚いた黒い物体は、秀傑が作った阿育王寺(あしょかおうじ)本堂の曼荼羅に描かれていた聖獣キルティムカを象った飾り瓦です。
秀傑がスズを抱き上げ背中を撫でてやります。興奮して大きくなっていた尻尾が徐々に小さくなり、落ち着き始めゴロゴロと喉を鳴らし始めました。
秀傑が慌てて船倉に降りていくのを見て、ついてきた普照が莚(むしろ)をめくります。ロウソクの灯が聖獣キルティムカの飾り瓦を浮かび上がらせます。
「これは瓦で作ったキルティムカじゃないか」と普照が秀傑に尋ねると、「はい、鴟尾と一緒に日本の寺院の屋根に飾りたいと思い作り、持ってきました」と答えました。
それから数日後、第一船は益救嶋(やくしま、現屋久島)にたどり着きます。
普照は鑑真様を日本にお連れできたことに安堵するも、先に出港した第二船がまだ着いていなことに心を曇らせています。
益救嶋(やくしま)に留まること10日、普照の元に大宰府に鑑真様をお連れするようにとの知らせが届き、第一船は第二船の到着を待たず出港することになりました。
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