社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第28話
十数匹のネズミが「キィキィキィ」と鳴き、栄叡が振る箒(ほうき)のようなものを避け、走り回っています。
時々、何匹かが鑑真が座している藁の中に潜りこもうとしたり、壁を器用に登って梁の上を行ったり来たりしています。
弟子達はネズミに噛まれることを恐れ、栄叡の後ろに隠れ鑑真を守るどころではありません。
そのような中、鑑真と普照が座り、お経を唱え始めました。
それを聴き、我に返った弟子達が一人、また一人と鑑真の後に座り、心を落ち着かせ、お経を唱え始めました。
どのくらい時間が経ったのでしょうか。天井近くに開いた窓の外が明るくなり、牢獄の中も明るくなってきました。
あれだけ走り回っていたネズミもいなくなっています。ただ、お経の声は途切れることなく響いています。
突然、「ガチャン」と牢獄の扉が開く音がしました。
お経を唱えていた弟子たちが一斉に振り返ります。そこには官服を着た一人の役人が立っていました。
役人が「鑑真様、もう二度と日本に行くのはお止めてください」と言います。
そして鑑真の手を取り立ち上がらせると、牢の外へ連れて行きました。
取り残された栄叡、普照、弟子達が「鑑真さま」と嗚咽しながら牢の外を見続けています。
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