招鬼猫物語

招鬼猫物語第32話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第32話

数か月前、遣唐大使の藤原清河(ふじわらのせいか)は日本から唐に着き、玄宗皇帝に拝謁します。

その時、世話をしてくれた阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)から、帰国する時に鑑真一行を遣唐使船に乗せて欲しいと頼まれていました。

大明寺の本堂に通された清河は鑑真、普照と対面し「今度の遣唐使船で日本へお連れしたい」と伝えました。二人は喜び、毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)に向かって手を合わせます。

それから四刻ほど阿倍仲麻呂も玄宗皇帝から帰国の許しを得て一緒に帰国することや、日本の話をして清河は辞去していきました。

山門まで見送った普照は戻るとき、本堂の屋根に据えられている鴟尾を見て、仲麻呂との約束を思い出しました。

それは日本に大明寺のような立派な瓦屋根を伝えたいということでした。

翌日、普照は大明寺の瓦を作っている工房に出向き、「日本に渡って瓦作りを指導してくれる人はいないか」と瓦工の親方に尋ねました。

親方は「ここの工房にいる者たちはみな妻子もちばかりだ」と答えました。

普照が困った表情をしていると、「明州の阿育王寺(あしょかおうじ)の麓で瓦を作っている周に、後を継いだ若い息子がいる」と教えてくれました。


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新商品「火の鳥ミニ鬼瓦」

マンガの神様、手塚治虫さんが描いた鬼瓦「火の鳥ミニ鬼瓦」9月25日発売

有限会社 岩月鬼瓦 (愛知県高浜市、 代表取締役・鬼師:岩月 秀之は) はマンガ火の鳥に登場する鬼瓦の意匠を踏襲した卓上サイズの「火の鳥ミニ鬼瓦」を2021年9月25日より発売いたします。

古代より災い、疫病から人々を守る願いが込められている『鬼瓦』

マンガ火の鳥「鳳凰編」にも鬼瓦が描かれています。漫画に描かれている時代は現代のコロナ禍と同じように疫病が流行っている時代。時の権力者は疫病終息の願いを込め大仏殿を建立し、我王、茜丸に鬼瓦を作らせました。本商品は手塚プロダクション監修のもと三州鬼瓦工芸品の手法を使い手塚治虫さんが描いた「我王の鬼瓦」、「茜丸の鬼瓦」を忠実に再現し2体1セットにしました。サイズは既に発売している「我王型鬼瓦」、「茜丸型鬼瓦」の高さ1/2サイズ、全体的には1/8のサイズになってます。

鬼瓦は古代より建物の中に宇宙のエネルギーを取り入れるもの、または邪気除け、人々の想いを込め未来へ伝えるものとして屋根等に飾られてきました。科学が発達して豊かになった現代の日本では、様々な願いを込めた鬼瓦を家の屋根に飾ることは少なくなってしまいました。本商品は現代の生活様式に合わせたサイズにしてあり、玄関、お部屋等に飾り心の安らぎを求めれる商品となっています。火の鳥ミニ鬼瓦で日本に伝わる屋根文化が少しでも再考していただければ幸いです。

ご購入はオンラインショップでどうぞ。
9月25日よりの発売になります。

併せて火の鳥鬼瓦商品もよろしくお願いいたします。通常サイズ、シルバーペンダントは随時販売してます。

招鬼猫物語

招鬼猫物語第31話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第31話

普照が怪訝な表情で「もう朝は明けてお昼に近い時刻ですよ」と教えました。横たわっている鑑真は「真っ暗で何も見えない」と言います。

一瞬、息が止まったように普照、弟子達の動きは止まり、鑑真は目を見開き、天井に向かって何かを探しているかのように手を動かし続けています。

動揺していた普照が我に返り、手を握り締め「ここに居ます、良くなれば見えるようになりますよ」と優しく声を掛けました。

数日経ち、鑑真は寝床から起き上がれるほど体調は回復しましたが、両目はよくならず見えないままです。

目が見えなくなってしまったのは自分のせいだと落ち込み座っている普照に、鑑真が「揚州へ戻り準備しますぞ」と話しかけました。

それを聞いた弟子達が「日本への渡航はお止めください、今度はお命がなくなります」と次々と鑑真の元に来て懇願し始め、普照を睨んでいます。

鑑真は「目が見えなくなるのも天命、日本に行くのも天命」と弟子達に優しく語っています。普照は目に涙を浮かべ、話を聞いています。

それから数か月後、揚州の大明寺で日本渡航を忙しく準備する鑑真、普照の元に一人の遣唐大使が訪ねてきました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第30話

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第30話

その噂話しが周親子に伝わる1年前の頃。

鑑真は虚ろな目をしながら「栄叡、なぜ私を日本に連れていかず、お釈迦様の元へ行ってしまったんだ」と西の空を仰ぎ見ています。

そして、「栄叡を供養するためにも、天竺に行かねば」と西に向かい歩き始めました。

栄叡は鑑真と6度目の日本渡航のため、海南から揚州に戻る途中に高熱を発して亡くなってしまったのです。

普照が「鑑真様、お気を確かにお持ちください。向かわれるのは天竺ではなく日本です」と言葉をかけ遺留します。

普照、弟子たちの慰めもあり鑑真は揚州へと向かいますが、栄叡の死から間もなくして南方の気候、積年の疲労がたたり、鑑真も病に倒れてしまいます。

普照は寝食を惜しみ、鑑真の看病にあたります。病に倒れてから数日が経ったある朝、熱も下がり鑑真が目を薄っすらと開けました。

お経を唱えていた弟子達も集まり、心配そうにのぞき込んでいます。

すると、鑑真が「まだ夜中なのか、真っ暗な中でお経を唱えているのか」と弱々しい声を発しました。その顔には窓から差し込んだ朝日が当たっています。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第29話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第29話

スズが栄叡、普照と別れ、阿育王寺(あしょかおうじ)の麓で瓦作りをしている周親子の元に来て、8年の歳月が経ちました。

瓦作りの朝は早く、スズは夜が明ける前から様々な場所を見て回るのが大好きです。

小高い山の斜面に造られた穴窯から、汗を噴き出した男達が体中を真っ黒にして瓦を運び出し、斜面の下に広がった場所では、女達が粘土を足で踏んで練っています。

その隣では練られた粘土が1尺の幅で人丈ほどの高さに積まれ、二人の男が藁を編んだ紐を使い、7分ほどの厚さの板状に削ぎ切り、近くの小屋の中に運んでいます。

小屋の中では秀傑が運びこまれた板状の粘土を使って、器用に3尺ほどの高さがある沓(くつ)のような形をしたものを一心不乱に作っているところです。

「秀傑、阿育王寺(あしょかおうじ)の鴟尾(しび)の進捗具合はどうだ」と言いながら親父の周が小屋の中に入って来ました。

すると秀傑の近くで腰を落としているスズを見て、思い出したかのように昨日、市場で聞いた話を秀傑に話し始めました。

それは5年前に5回目の日本渡航を試みてまたもや暴風に合い、南方の海南まで流された鑑真達がまた日本へ向かうという噂話でした。


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