社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第32話
数か月前、遣唐大使の藤原清河(ふじわらのせいか)は日本から唐に着き、玄宗皇帝に拝謁します。
その時、世話をしてくれた阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)から、帰国する時に鑑真一行を遣唐使船に乗せて欲しいと頼まれていました。
大明寺の本堂に通された清河は鑑真、普照と対面し「今度の遣唐使船で日本へお連れしたい」と伝えました。二人は喜び、毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)に向かって手を合わせます。
それから四刻ほど阿倍仲麻呂も玄宗皇帝から帰国の許しを得て一緒に帰国することや、日本の話をして清河は辞去していきました。
山門まで見送った普照は戻るとき、本堂の屋根に据えられている鴟尾を見て、仲麻呂との約束を思い出しました。
それは日本に大明寺のような立派な瓦屋根を伝えたいということでした。
翌日、普照は大明寺の瓦を作っている工房に出向き、「日本に渡って瓦作りを指導してくれる人はいないか」と瓦工の親方に尋ねました。
親方は「ここの工房にいる者たちはみな妻子もちばかりだ」と答えました。
普照が困った表情をしていると、「明州の阿育王寺(あしょかおうじ)の麓で瓦を作っている周に、後を継いだ若い息子がいる」と教えてくれました。
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