招鬼猫物語

招鬼猫物語第31話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第31話

普照が怪訝な表情で「もう朝は明けてお昼に近い時刻ですよ」と教えました。横たわっている鑑真は「真っ暗で何も見えない」と言います。

一瞬、息が止まったように普照、弟子達の動きは止まり、鑑真は目を見開き、天井に向かって何かを探しているかのように手を動かし続けています。

動揺していた普照が我に返り、手を握り締め「ここに居ます、良くなれば見えるようになりますよ」と優しく声を掛けました。

数日経ち、鑑真は寝床から起き上がれるほど体調は回復しましたが、両目はよくならず見えないままです。

目が見えなくなってしまったのは自分のせいだと落ち込み座っている普照に、鑑真が「揚州へ戻り準備しますぞ」と話しかけました。

それを聞いた弟子達が「日本への渡航はお止めください、今度はお命がなくなります」と次々と鑑真の元に来て懇願し始め、普照を睨んでいます。

鑑真は「目が見えなくなるのも天命、日本に行くのも天命」と弟子達に優しく語っています。普照は目に涙を浮かべ、話を聞いています。

それから数か月後、揚州の大明寺で日本渡航を忙しく準備する鑑真、普照の元に一人の遣唐大使が訪ねてきました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第30話

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第30話

その噂話しが周親子に伝わる1年前の頃。

鑑真は虚ろな目をしながら「栄叡、なぜ私を日本に連れていかず、お釈迦様の元へ行ってしまったんだ」と西の空を仰ぎ見ています。

そして、「栄叡を供養するためにも、天竺に行かねば」と西に向かい歩き始めました。

栄叡は鑑真と6度目の日本渡航のため、海南から揚州に戻る途中に高熱を発して亡くなってしまったのです。

普照が「鑑真様、お気を確かにお持ちください。向かわれるのは天竺ではなく日本です」と言葉をかけ遺留します。

普照、弟子たちの慰めもあり鑑真は揚州へと向かいますが、栄叡の死から間もなくして南方の気候、積年の疲労がたたり、鑑真も病に倒れてしまいます。

普照は寝食を惜しみ、鑑真の看病にあたります。病に倒れてから数日が経ったある朝、熱も下がり鑑真が目を薄っすらと開けました。

お経を唱えていた弟子達も集まり、心配そうにのぞき込んでいます。

すると、鑑真が「まだ夜中なのか、真っ暗な中でお経を唱えているのか」と弱々しい声を発しました。その顔には窓から差し込んだ朝日が当たっています。


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招鬼猫物語第29話

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第29話

スズが栄叡、普照と別れ、阿育王寺(あしょかおうじ)の麓で瓦作りをしている周親子の元に来て、8年の歳月が経ちました。

瓦作りの朝は早く、スズは夜が明ける前から様々な場所を見て回るのが大好きです。

小高い山の斜面に造られた穴窯から、汗を噴き出した男達が体中を真っ黒にして瓦を運び出し、斜面の下に広がった場所では、女達が粘土を足で踏んで練っています。

その隣では練られた粘土が1尺の幅で人丈ほどの高さに積まれ、二人の男が藁を編んだ紐を使い、7分ほどの厚さの板状に削ぎ切り、近くの小屋の中に運んでいます。

小屋の中では秀傑が運びこまれた板状の粘土を使って、器用に3尺ほどの高さがある沓(くつ)のような形をしたものを一心不乱に作っているところです。

「秀傑、阿育王寺(あしょかおうじ)の鴟尾(しび)の進捗具合はどうだ」と言いながら親父の周が小屋の中に入って来ました。

すると秀傑の近くで腰を落としているスズを見て、思い出したかのように昨日、市場で聞いた話を秀傑に話し始めました。

それは5年前に5回目の日本渡航を試みてまたもや暴風に合い、南方の海南まで流された鑑真達がまた日本へ向かうという噂話でした。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第28話

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第28話

十数匹のネズミが「キィキィキィ」と鳴き、栄叡が振る箒(ほうき)のようなものを避け、走り回っています。

時々、何匹かが鑑真が座している藁の中に潜りこもうとしたり、壁を器用に登って梁の上を行ったり来たりしています。

弟子達はネズミに噛まれることを恐れ、栄叡の後ろに隠れ鑑真を守るどころではありません。

そのような中、鑑真と普照が座り、お経を唱え始めました。

それを聴き、我に返った弟子達が一人、また一人と鑑真の後に座り、心を落ち着かせ、お経を唱え始めました。

どのくらい時間が経ったのでしょうか。天井近くに開いた窓の外が明るくなり、牢獄の中も明るくなってきました。

あれだけ走り回っていたネズミもいなくなっています。ただ、お経の声は途切れることなく響いています。

突然、「ガチャン」と牢獄の扉が開く音がしました。

お経を唱えていた弟子たちが一斉に振り返ります。そこには官服を着た一人の役人が立っていました。

役人が「鑑真様、もう二度と日本に行くのはお止めてください」と言います。

そして鑑真の手を取り立ち上がらせると、牢の外へ連れて行きました。

取り残された栄叡、普照、弟子達が「鑑真さま」と嗚咽しながら牢の外を見続けています。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第27話

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第27話

残された牢番は棒で牢を叩きながら、強い口調で「お経を唱えるのを止めないともっとひどい目に遭うぞ」と言っています。

しかし、鑑真達はそこに牢番がいないかのように微動だにせずお経を唱え続けています。

牢番の詰め所に戻っていた牢番が手に薄汚れた竹籠を持って戻ってきました。

残っていた牢番は今から始まる光景が目に浮かぶのか、ニヤニヤしながら戻ってきた牢番に竹籠を牢の中に置けと目配せをしています。

薄汚れた竹籠が牢の中に置かれると、待っていた牢番が棒で鑑真を取り囲んでいる弟子たちの前に勢いよく押し入れました。

すると竹籠が勢いで横向きになり蓋が開き、中から小さな物体が幾つも放り出され動き回り始めます。

それを見た牢番達は笑いながら「嚙まれるなよ」と言って何処かへ行ってしまいます。

お経を唱える声が止まり、若い弟子たちが「ネズミだ、ネズミだ」と次々に叫び声を上げ始めました。

栄叡が「敷いてある藁を束ねろ」と弟子たちに命じ、弟子たちが慌てて藁を束ね、箒(ほうき)のようなものを作り上げました。

そして、それを手に持った栄叡はネズミに向かって振り始めました。


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