招鬼猫物語

招鬼猫物語第36話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第36話

スズが尻尾をピンと立て二人の後に続きます。

山の斜面に面した広場に出ると、女、子供が何百枚もの瓦を1枚ずつ立て、互い違いに並べ天日干しの作業をしています。

秀傑にとっては毎日の見慣れた光景ですが、普照にとっては初めて見る光景です。

普照が足を止め、「まるで胎蔵界曼荼羅に描かれている菩薩を取り囲む模様のようだ」とつぶやきました。

それは、天日干しの作業をしている一人一人が均一の距離を保ち、持ち場の瓦を常に陽の当たる方向に並べ変えているため、幾何学模様に囲まれた菩薩のように見えたからです。

秀傑も足を止め、「確かに曼荼羅のようだ、そうするとあそこの辺りが死者の門か、なぜ今まで気がつかなかったのか」と思いながら見ています。

しばらくその光景を見ていた二人は再び歩き始め、秀傑の作業小屋に入って行きました。

うす暗い小屋の中央に、藁で編んだ莚(むしろ)が巻かれた、人の腰の高さほどある物体が二つ見えます。

秀傑が明かり窓を開け、莚を外すと、2体の沓(くつ)を逆さまにしたような鴟尾(しび)が現れました。

その鴟尾は、沓のつま先部分にあたる上部は白く、下にいくほど白と茶色がまだらになっています。


第1話~第35話はアーカイブ、カレンダーから検索してお読みできます。

招鬼猫物語

招鬼猫物語第35話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第35話

普照が秀傑に歩み寄り、手を取り、ギュッと固く握ります。

座っていた周も立ち上がり、二人が握っている手の上に手を添え「息子のことをよろしくお願いします」と頭を下げました。

その光景を見ていたスズが、三人の足に頭を摺り寄せ「ニャー、ニャー」と鳴いています。

秀傑がスズを抱き上げ、「スズも日本に行きたいのか、連れて行ってもいいですか」と普照に尋ねます。

「もちろん、スズにも船で大事な仕事をしてもらう」と答えると、スズが「ニャー」と鳴いたので3人は腹を抱えて笑い始めました。

しばらくしてから、秀傑は「日本でどのような瓦を作るのですか」と尋ねると、普照は「鴟尾(しび)を知っているか、日本の寺院に立派な鴟尾を据えるのが自分たちの夢なんだ」と答えました。

周が「秀傑、普照様に製作している阿育王寺(あしょかおうじ)の鴟尾を見てもらいなさい」と言いました。

「是非とも見させてください」と普照が秀傑を見ます。

「作業小屋に行きましょう」と秀傑は普照の手を取り、部屋を出て行きました。


第1話~第34話はアーカイブ、カレンダーから検索してお読みできます。

招鬼猫物語

招鬼猫物語第34話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第34話

「8年前、鑑真様を日本にお連れしようとした船の中で一緒だったんだよ」と普照が言います。それを聞き秀傑は抱いていたスズを渡しました。

スズは嬉しそうに大きな目で普照を見上げ、普照は小さな子供をあやすかのように背中を優しく撫でながら、この8年の苦難を思い出しています。

「秀傑、普照様は日本で瓦作りを教える人を捜しているそうだ、日本に行く気はあるか」と周が息子の秀傑に話しかけました。

思いがけない父の言葉に驚きながらも、自分が日本で瓦を教える役目を貰えたことに嬉しさを感じ、「行きます。いつ出発するんですか」と返事をしました。

周が寂しそうな目で普照の顔を見ました。

普照がスズを床に下ろし、真剣な顔で「11月に出発することになっている。本当に我々と一緒に日本に行ってくれるのか、2度と戻って来れないかもしれないぞ」と秀傑に問い返しました。

秀傑はハッと気づき、寂しそうな目をしている父親の周を見ます。周は心配するな、行ってきなさいというように頷いています。

しばらくの間、父を見つめてから「日本に行く覚悟ができました」と普照に答えました。


第1話~第33話はアーカイブ、カレンダーから検索してお読みできます。

おすすめ!, お知らせ

蒲郡市竹島水族館とコラボ

蒲郡市竹島水族館企画展「鬼展」に、いきものシェルター「鬼ヶ島」を提供

2021年10月9日(土)より11月7日(日)まで蒲郡市竹島水族館で開催される企画展「鬼展」に三州鬼瓦工芸品の手法で制作する『いきものシェルター「鬼ヶ島」』を提供します。

人にとって安心、安全な場所の家。その家には古代より天変地異、風水害、病から守るモノとして鬼瓦を飾り、安心、安全、子孫繁栄の願いを鬼瓦に込めました。人間は身の危険を感じれば頑丈な建物に逃げます。

小さな生き物たちも身を守る場所として様々な隠れ家を持っています。商品名の鬼ヶ島は昔話「桃太郎」から付けています。桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治に行きます。悪さをする鬼にも自分を守る隠れ家があり、その島に住む生き物にも隠れ家があったことでしょう。

本商品は、鬼瓦は人間だけを守るモノではなく、小さな生き物、地球上全ての生き物を守るモノとしてのコンセプトで、神社仏閣用鬼瓦を作る女性職人の鬼師kumiが三州鬼瓦工芸品の手法で制作しています。

科学が発達して豊かになった日本では、鬼瓦に願いを込め屋根に飾ることが少なくなってしまいました。鬼瓦の文化を少しでも人々に知ってもらいたいと考え、いきものシェルター「鬼が島」を蒲郡市竹島水族館に提供して企画展「鬼展」開催となりました。

ー企画展開催概要ー

企画展名:「鬼展」
開催期間:2021年10月9日(日)~11月7日(日)
開催場所:蒲郡市竹島水族館 愛知県蒲郡市竹島町1-6
展示内容 鬼と関係がある生き物たちを10種類

お問合せ先:蒲郡市竹島水族館  担当者名:戸舘、平松
TEL:0533-68-2059
E-Mail:aquarium@nrc.gamagori.aichi.jp


是非ともいきものシェルター「鬼が島」に隠れている生き物をみてくださいね。

招鬼猫物語

招鬼猫物語第33話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第33話

陽が差しこむ阿育王寺の本堂に、色鮮やかに浮かび上がった胎蔵界曼荼羅を見つめている秀傑とスズの姿があります。

曼荼羅は大日如来を中心に仏、菩薩を配置して、仏教を見える形で教えている絵図です。

秀傑は曼荼羅の下側、北門(死者の門)に描かれている聖獣キルティムカを瓦で作りたいと考え、暇があればスズを連れて見に来ていました。

「秀傑さん、秀傑さん」と工房で働いている瓦工の子供が呼んでいます。外に出ていくと、「親方が早く工房に戻るように」と伝えてきました。

スズを抱いて工房に戻った秀傑は、親方で父親でもある周のいる部屋に向かいます。そこには周と普照が、椅子に座りお茶を飲んでいるところでした。

普照は部屋に入ってきた若者が抱いている猫を見て、驚いています。

「息子の秀傑です」と周が紹介します。

普照は立ち上がり、秀傑に挨拶する間もなく抱いている猫の顔をのぞき込み、「スズじゃないか」と顔をほころばせています。

スズは怪訝な顔をした秀傑の腕の中で「ニャー、ニャー」と鳴き、「ゴロゴロ」と喉を鳴らし、普照に抱いて欲しいかのように体を動かしています。


第1話~第32話はアーカイブ、カレンダーから検索してお読みできます。