社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第15話
嵐が過ぎ去ってから3日目の朝を迎えました。遣唐大使の部屋で鑑真一行、栄叡、普照がお経を唱え、スズは普照の近くに座りお経を聞いています。
甲板では水夫長が帆柱の上で西の方角を見ている水夫に「まだ、陸は見えないか」と何度も声を掛けています。
亡くなった王船長から太陽、星の位置で方角を測り、操船する事を習っていた水夫長でしたが、3日経っても陸が見えて来ず焦っているようです。
それもそのはずです、船にはもう飲み水が一甕しか残っていませんでした。一甕ではどんなに節約しても1日で底をついてしまいます。
突然、「陸が前に見えるぞ」と水夫の大きな声が聞こえてきました。水夫長が確認するため船首に走ります。
甲板にいた者たちは船べりから顔を出して陸を探しています。「見えるぞ、陸だ、あそこだ」と歓声があがりはじめました。
その歓声を聞き、遣唐大使の部屋でお経を唱えていた鑑真一行、栄叡、普照がスズを抱いて部屋から出て来ました。そして遠くに見える陸を見つけ、安堵の表情で手を取り喜び合っています。
普照に抱かれていたスズがいつの間にか帆柱の一番上まで登り、徐々に近づいてくる陸をじーっと見ています。
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