社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第30話
その噂話しが周親子に伝わる1年前の頃。
鑑真は虚ろな目をしながら「栄叡、なぜ私を日本に連れていかず、お釈迦様の元へ行ってしまったんだ」と西の空を仰ぎ見ています。
そして、「栄叡を供養するためにも、天竺に行かねば」と西に向かい歩き始めました。
栄叡は鑑真と6度目の日本渡航のため、海南から揚州に戻る途中に高熱を発して亡くなってしまったのです。
普照が「鑑真様、お気を確かにお持ちください。向かわれるのは天竺ではなく日本です」と言葉をかけ遺留します。
普照、弟子たちの慰めもあり鑑真は揚州へと向かいますが、栄叡の死から間もなくして南方の気候、積年の疲労がたたり、鑑真も病に倒れてしまいます。
普照は寝食を惜しみ、鑑真の看病にあたります。病に倒れてから数日が経ったある朝、熱も下がり鑑真が目を薄っすらと開けました。
お経を唱えていた弟子達も集まり、心配そうにのぞき込んでいます。
すると、鑑真が「まだ夜中なのか、真っ暗な中でお経を唱えているのか」と弱々しい声を発しました。その顔には窓から差し込んだ朝日が当たっています。
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