招鬼猫物語

招鬼猫物語第3話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第3話

船は湾に浮かぶ最後の島を右手に見て外洋に出ようとしています。

「船を東に向けろ」と船長が大きな声で舵師に命じました。舵師が右手を上げます。それを見た舵取り六人が「ギッシ ギッシ」と舵を動かす綱を巻き上げていきます。船が少しずつ東を向き始め、船長の背中にあたっていた太陽が右の顔にあたるようになってきました。

王船長は眩しそうに手を額にあて「昔のように北に船を進めて陸沿いで行ければ安全なのだが・・・・・・」と、甲板に座る僧の一団に目をやりました。

そこには一人の高僧を囲むように二十数人の僧と二人の日本人僧が座しています。高僧の名前は鑑真(がんじん)、日本人僧は栄叡(ようえい)と普照(ふしょう)です。栄叡と普照は日本の僧に「戒律」を授ける伝戒師として鑑真を日本へお連れする途上です。

船長が「鑑真様を大使の部屋へご案内いたせ」と水夫長に命じました。甲板には三つの部屋があり、一番後ろにある部屋は高貴な方が使う遣唐大使の部屋になっています。スズは尻尾をピンと立て鑑真一行を部屋へ案内する水夫長の後を付いて行く事にしました。