招鬼猫物語

招鬼猫物語第4話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第4話

遣唐大使の部屋に入った鑑真一行は鑑真を中心に車座に座り、スズは部屋に置かれた暖をとるための火鉢の前で丸まり目を閉じています。
栄叡が「日本にやっとお連れすることができます」と安堵した顔で鑑真に言います。普照は目に涙を浮かべこの11年の苦難の道を思い出していました。

栄叡と普照は11年前の西暦733年、聖武天皇より僧に位を与える「伝戒師」を捜すよう命じられ、遣唐使船で唐に渡ることになりました。それから9年に及ぶ歳月をかけ西暦742年、僧に戒を授けることができる高僧の鑑真に出会います。翌年の夏、二人は鑑真を日本にお連れしようと明州の港まで来たのですが、弟子達の猛反対に合い船に乗ることができず日本への渡海は失敗に終わってしまいます。そして今回、やっと弟子たちを納得させ日本に行く船に乗ることができました。

部屋の中に差していた陽が弱くなり、床にあった影が壁まで伸びてきた頃、格子窓から美味しそうな匂いが漂ってきました。スズは「もう、こんな時間か」と鼻をピクピクさせ、目を開け、前足を伸ばし、大きなあくびをし、背伸びをしながら部屋を出ていきます。