招鬼猫物語

招鬼猫物語第39話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第39話

荷車を引き賑やかな市場を抜けると、港に朱色が鮮やかな3隻の遣唐使船が現れ、多くの荷夫達が様々な荷物を船に積み込んでいるのが見えます。

船に近づくと、普照が中央に泊まっている船の上から手を振っています。

その船に渡されている橋桁の前に荷車を停め、荷を留めていた紐を解いていると、普照が一人の貴人を伴い船から降りてきました。

普照は周親子に慇懃な挨拶をしてから、「こちらの方は私達と一緒に日本に帰る阿倍仲麻呂様です」と先ほどの貴人を紹介しました。

そして秀傑に運んできた荷を解き、鴟尾を阿倍仲麻呂に見せるよう促しました。

荷車には藁で編んだ莚(むしろ)に包まれた二体の鴟尾が載っています。秀傑が荷車の上で莚を解くと、綺麗ないぶし銀色をした鴟尾が現れました。

阿倍仲麻呂が「私が日本に持ち帰りたかったのはこの鴟尾だ、これで想い残すことなく日本に帰れる」と普照の手を握りしめています。

「ジャーン、ジャーン」と出港の準備を早く終わらせる合図の銅鑼が鳴りました。

阿倍仲麻呂が近くにいた荷夫達に鴟尾を遣唐使船の第2船に載せるよう指示し、船へと運びこまれていきます。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第38話

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第38話

それから数か月後、明州の港近くの市場ではいつものように万頭売りの楊おばさんが、「美味しい万頭だよ、美味しい万頭はいらんかね~」と道行く人に声を掛けています。

そこに荷車が止まり、「スズを連れてきましたよ」と周が楊おばさんに声を掛けました。

楊おばさんが荷台の上を見ると、スズが「ニャー」と鳴き、尻尾を振っています。

「スズ、元気だったかい」と言いながら荷台に手を差し伸べ抱き上げました。スズは頭を撫でられる度に、嬉しくて喉をゴロゴロ鳴らせています。

「今日はどうしたんですか」と楊おばさんが周に尋ねます。

周は「今度の遣唐使船で日本に渡る、息子の秀傑とスズを見送りに来ました」と答えてから、「秀傑、楊さんにご挨拶をしなさい」と言いました。

すると、荷台の後ろから秀傑が現れ頭を下げています。

「ジャーン」と港で銅鑼が鳴っています。

楊おばさんは慌てて、「気を付けていくんだよ、スズの事も頼むよ」と万頭が包まれた包みを二つ秀傑に渡しました。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第37話

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第37話

秀傑に近くで見るよう促された普照は、スズと一緒に近づき、膝を地面につけて鴟尾を見ています。

そして、「阿倍仲麻呂様と私が思い描いていた鴟尾そのものだ」、「秀傑さん、この鴟尾と同じ物を日本に持っていきたいのですが作ってもらえないですか」と続けざまに興奮した様子で話し始めました。

興奮して話す様子に戸惑い、訳が分からない秀傑は「どうされたんですか」と聞くのが精一杯です。

「今回の渡航で、私たちの夢が二つも叶うのです」と普照が答えると、「鑑真様を日本にお連れする遣唐使船で私の作った鴟尾も日本に運ぶのですね、出港するまでに鴟尾を作ります」と納得した顔で秀傑は返事をしました。

「お願いします。私はこの事を阿倍仲麻呂様に伝えるため長安の都に行きますので出港の日に港でお会いしましょう」と言って立ち上がると、スズが体を足に摺り寄せています。

「秀傑さん、スズも必ず連れてきてください」と言うと、スズが嬉しそうな顔で「ニャー」と鳴きました。

しばらく二人は日本の事を話し、普照はその日のうち工房を後にして都に向かい、秀傑は日本に運ぶ鴟尾を作り始めました。

 


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第36話

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第36話

スズが尻尾をピンと立て二人の後に続きます。

山の斜面に面した広場に出ると、女、子供が何百枚もの瓦を1枚ずつ立て、互い違いに並べ天日干しの作業をしています。

秀傑にとっては毎日の見慣れた光景ですが、普照にとっては初めて見る光景です。

普照が足を止め、「まるで胎蔵界曼荼羅に描かれている菩薩を取り囲む模様のようだ」とつぶやきました。

それは、天日干しの作業をしている一人一人が均一の距離を保ち、持ち場の瓦を常に陽の当たる方向に並べ変えているため、幾何学模様に囲まれた菩薩のように見えたからです。

秀傑も足を止め、「確かに曼荼羅のようだ、そうするとあそこの辺りが死者の門か、なぜ今まで気がつかなかったのか」と思いながら見ています。

しばらくその光景を見ていた二人は再び歩き始め、秀傑の作業小屋に入って行きました。

うす暗い小屋の中央に、藁で編んだ莚(むしろ)が巻かれた、人の腰の高さほどある物体が二つ見えます。

秀傑が明かり窓を開け、莚を外すと、2体の沓(くつ)を逆さまにしたような鴟尾(しび)が現れました。

その鴟尾は、沓のつま先部分にあたる上部は白く、下にいくほど白と茶色がまだらになっています。


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招鬼猫物語

招鬼猫物語第35話

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第35話

普照が秀傑に歩み寄り、手を取り、ギュッと固く握ります。

座っていた周も立ち上がり、二人が握っている手の上に手を添え「息子のことをよろしくお願いします」と頭を下げました。

その光景を見ていたスズが、三人の足に頭を摺り寄せ「ニャー、ニャー」と鳴いています。

秀傑がスズを抱き上げ、「スズも日本に行きたいのか、連れて行ってもいいですか」と普照に尋ねます。

「もちろん、スズにも船で大事な仕事をしてもらう」と答えると、スズが「ニャー」と鳴いたので3人は腹を抱えて笑い始めました。

しばらくしてから、秀傑は「日本でどのような瓦を作るのですか」と尋ねると、普照は「鴟尾(しび)を知っているか、日本の寺院に立派な鴟尾を据えるのが自分たちの夢なんだ」と答えました。

周が「秀傑、普照様に製作している阿育王寺(あしょかおうじ)の鴟尾を見てもらいなさい」と言いました。

「是非とも見させてください」と普照が秀傑を見ます。

「作業小屋に行きましょう」と秀傑は普照の手を取り、部屋を出て行きました。


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