招鬼猫物語

招鬼猫物語第9話

社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。

第9話

その時、遣唐大使の部屋の扉を破り海水が流れ込んできました。栄叡が「危ない」と言いながら咄嗟に鑑真に覆いかぶさります。

毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)像が倒れ、ロウソクの灯が消えます。海水が次々と部屋に流れこみ、壁に大きく叩きつけられた弟子たちのうめき声が暗闇に響きます。

下がっていた船首が今度は上がりはじめ、流れ込んでいた海水が部屋の全てのものを運びだそうと扉から流れ出します。荷物と一緒に弟子の一人が部屋の外へ流されていきます。

栄叡は鑑真を抱え柱にしがみつきながら必死に普照の姿を探していますが、暗闇と波の轟音のため見つけることができません。

普照は海水が部屋に流れ込み毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)像が倒れ時に、流されようとしていたスズを咄嗟に僧衣の中に抱え入れていました。

しかし次の瞬間、普照は海水に足元をすくわれ壁に頭を打ち意識をなくしていたのでした。

しばらくして嵐は過ぎ去りました。「チリン、チリン」とスズが首に付けている鈴の音が聞こえるほど静寂が戻り、夜が明けはじめ部屋の中が薄っすらと明るくなっています。

スズは床に倒れている普照の顔を栄叡と一緒に心配そうにのぞき込んでいます。


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