社長が毎週月曜日に投稿している招鬼猫を題材にした物語です。
第47話
帆が折れ、大海原を漂流していた第二船の遣唐大使の部屋にも朝日が入り込み、床でぐったりとしている人々の顔を照らしています。
阿倍仲麻呂が顔に当たる陽の暖かさに気づき立ち上がり、部屋の外に出て行きます。甲板の光景に、35年振りの日本帰国の喜びが一瞬に絶望へと変わってしまいました。
帆を失った第二船は潮の流れに任されるままに西へ、西へと流されていきます。
帆に風を受け、順調に進む第一船に夕闇が迫ってきました。]
スズが船倉へ続く階段を下りていきます。そこには阿児奈波嶋(あこなはじま)で補給された水の入った甕、食料が所狭しと置かれています。
スズは船倉の奥に進み、いつもの経典が収められた木箱の上に座り、目を閉じ眠り始めました。
どのくらい時間が経ったでしょうか、波が船底を叩く音に混ざって微かに「きぃ、きぃ」とネズミが鳴く声がしてきました。
スズは立ち上がり、鳴き声のする莚(むしろ)の中に前足を出し入れしています。
すると、鋭い爪が引っ掛かり莚(むしろ)が破れ、大きな目を持った黒い物体が破れた穴からこちらを睨んでいます。驚いたスズは唸り、尻尾を太くして黒い物体の周りを行ったり来たりしています。
ただならぬ唸り声に気づいた秀傑が船倉に降りてきました。
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